若き天才バレエ・ダンサー、セルゲイ・ポルーニン。
バレエ好きの方ならご存知だったかもしれませんが、私が彼を知ったのは、2015年に公開されて世界的に大きな反響を呼んだ、ホージアの「Take Me to Church」のミュージックビデオ。
現在はYou Tubeですでに2000万回以上も再生されているそうです。
このミュージックビデオの監督は、ファッション・フォトグラファーとして有名なデヴィッド・ラシャペル。
ラシャペルは写真だけでなく、映画監督としてクランプ・ダンスのドキュメンタリー映画『RIZE』(2006)なども手がけています。最近では、ファッションブランド「DIESEL」の2017SSのキャンペーン動画の監督を務めており、こちらにはセルゲイ・ポルーニンも出演しています。
最初に登場する上半身裸の大将がセルゲイ
なお、今回の映画の監督はラシャペルではなく、スティーヴン・カンター。
今作では、セルゲイ本人、両親、祖母、友人などへのインタビューや幼少期に撮影された映像を通して、彼の生い立ちや、苦悩、電撃的な退団劇の真実に迫っています。
※以下ざっくりネタバレです。
人気・実力ともに群を抜いていたそうなのですが、パーティー好きだったり、全身にタトゥーを入れていたり(胸のひっかき傷みたいのもタトゥー)、ドラック疑惑や過激な発言、素行の悪さが度々マスコミに取り上げられ、バレエ界のBad boyと呼ばれ、退団時も相当マスコミに叩かれたんだとか。
私は自分自身が凡人なせいか、こういう異端の天才とか破天荒な人にはものすごく魅了されます。
辞めちゃうなんてもったいな〜い、とかアホみたいに思いましたが、この映画を見ていると、セルゲイが迷い、苦悩する理由がなんか分かるんですよね。
ウクライナの田舎町に生まれ、貧しいながらも家族仲良く暮らしていた幼少期。良い先生にも巡り会い、バレエが大好きになったんだとか。
ややステージママ気味の母親の野心に翻弄され、田舎町を出て母とふたりで首都キエフへ行き、さらなる高みを目指して、英国ロイヤル・バレエ・スクールへ単身留学したのは11歳のとき。
その間、彼の学費や生活費を工面するべく、父親はポルトガルに、母方の祖母はギリシャへ出稼ぎに出て、家族はバラバラになってしまい、そのことで彼はひどく心を痛めていたようです。
しかし、15歳のときに両親は離婚。
「バレエダンサーとして早く成功して、バラバラになった家族を再びひとつにするんだ!」という希望を胸に、ひとり異国の地でハードな練習に励んできたセルゲイ少年にはかなりショックな出来事だったそう。
ご本人もインタビューで度々語っていましたが、幼い頃に家族がバラバラになってしまったことが本当に悲しくて、どうにかしてまた家族みんなで一緒に幸せに暮らしたいという強い思いが、ずっと彼の原動力となっていたようです。
ややステージママ気味の母親の野心に翻弄され、田舎町を出て母とふたりで首都キエフへ行き、さらなる高みを目指して、英国ロイヤル・バレエ・スクールへ単身留学したのは11歳のとき。
その間、彼の学費や生活費を工面するべく、父親はポルトガルに、母方の祖母はギリシャへ出稼ぎに出て、家族はバラバラになってしまい、そのことで彼はひどく心を痛めていたようです。
しかし、15歳のときに両親は離婚。
「バレエダンサーとして早く成功して、バラバラになった家族を再びひとつにするんだ!」という希望を胸に、ひとり異国の地でハードな練習に励んできたセルゲイ少年にはかなりショックな出来事だったそう。
ご本人もインタビューで度々語っていましたが、幼い頃に家族がバラバラになってしまったことが本当に悲しくて、どうにかしてまた家族みんなで一緒に幸せに暮らしたいという強い思いが、ずっと彼の原動力となっていたようです。
その後もバレエは続け、プリンシパルの座にあっという間に上りつめるのですが、「家族を再びひとつに」という目的が叶わなくなった今、“バレエで成功”という目標が、彼にとってもはや意味のないものになってしまっていたのでした。
世間的には、“早過ぎる退団”と受け取られましたが、セルゲイにとっては既に限界を超えていたことがよくわかります。
ところで、映画を観ていて衝撃だったのは、バレエダンサーの過酷さ。
ハードな練習を毎日こなし、さらにリハーサルと毎晩の興行。舞台上では、まるで重力なんか感じてないみたいに、軽やかに飛び、優雅に回転しているけれど、実際には体はボロボロで足だって傷だらけ。
セルゲイも米軍兵用に開発されたっていうヤバそうな栄養ドリンクとか、痛み止めや強心剤みたいな薬をあおって、半ばハイ状態で舞台に挑んでいました。
そうすることで100%かそれ以上のパフォーマンスを引き出していたんでしょうけど、連日、過酷なトレーニングと過度なプレッシャーにさらされていたのでは、そりゃあもたないよね。精神的にも、肉体的にも。
後半はロンドンを去ったセルゲイの模索というか、自分探しの旅的な流れになります。
もうバレエからは離れたいという気持ちと、でも踊ることは好きだという思いの狭間での葛藤や、なにより普通の暮らしをしたい、という少年の頃からの渇望に苦悩する姿が捉えられています。
そして、ついにバレエダンサーとして生きることを辞めようと決断し、挑んだのが件のホージアの「Take Me to Church」のMV。
英国ロイヤル・バレエ・スクール時代の同級生で、セルゲイのよき理解者である親友が振り付けを担当。セルゲイのバレエ人生を表現したコレオグラフィーとなっているそうです。
なんか、映画を観たあとにこの動画見ると感じるんだけど、彼はただのダンサーじゃなくて、アーティストなんだろうね。
才能も、実力も、情熱もあって、踊ることで人々魅了することができるけど、ただ決められた振り付けをこなすだけでは満足できない。自分自身で何かを表現したいっていう衝動を抑えられないでいるのだろうな、と思いました。
さて、現在は引退は考え直し、ダンスプロジェクトを主導したり、モデルや俳優業にもチャレンジしているそうですが、なんと!ケネス・ブラナーがリメイクした『オリエント急行殺人事件』(12/8公開)にも、アンドレニ伯爵役で出演しているそうです。
ちょっとヒュー・ジャックマン系のお顔立ちの美青年ですし、映画業界にもどしどし進出していただきたいですね。
ちなみに、エンドクレジットに流れる曲は私の大好きなLykke Liの曲でした。
Lykke Liは『アデル、ブルーは熱い色』(2014)にも「I Follow Rivers」が挿入歌として使われていてすごく好きだったのですが、今回の「Dance Dance Dance」も映画の余韻にマッチした素敵な曲です。
映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』は絶賛公開中。
(H)
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