ポストカードもらえたよ
思い入れの度合いや、記憶に残るレンジャーは違えど、スーパー戦隊ヒーロードラマ見たことのある人は世代を超えて多いのではないでしょうか?
ダ○エーの屋上とかで興行やってたあの方たちですよ。
この、日本人には馴染みの深い戦隊ヒーロー番組が、1993年に「Mighty Morphin Power Rangers」としてアメリカのテレビで放映され大ヒットしたそうなんです。
今作『パワーレンジャー』は、アメリカに持ち込まれた日本発のスーパー戦隊ヒーローを現代版にアレンジし制作されたアメリカ映画です。
アメコミものではありませんがスーパーヒーロー映画好きのO-sideとしては見逃せません。
花金のアフターファイブに観賞してまいりました。
※以下ネタバレです。
率直な感想を言うと『パワーレンジャー』はアクションヒーロー映画としては物足りないです。
戦うシーンも少ないし、見せ場になるような痛快なアクションもなく、敵もCG丸出しな感じで正直ビミョー。いっそ特撮のがかっこよくね、と思わないでもない。
ガンガン戦うアクションものを期待していくと、肩すかしをくらう可能性があります。
しかし、青春ものとしてはけっこう秀逸な作品だと感じました。
わたくしは青春時代をとうの昔に終えておりますので、ひたすら目を細めて観ておりましたが、青春まっただ中の若者だったらグっと胸が熱くなるストーリーだと思われます。
そんなわけで今回は『パワーレンジャー』(以下パワレン)を青春映画として捉えて観た感想を綴りたいと思います。
青春ポイントその1 アメリカの学園ものの定番“スクールカースト”
映画だったら、リンジー・ローハン主演の『ミーンガールス』(2005)、ドラマなら『glee』なんかで分かりやすく描かれていますが、どの階層に属するかで高校生活の命運を分けるというスクールカースト。
パワレンでも主人公たちが通う小さな町の高校に存在する暗黙の階級意識がやんわり描かれています。
なお、主要キャラの5人はみなカーストの最下層に属していますが、赤レンジャーことジェイソンはアメフトチームのクオーターバックのスター選手の座から、ピンクレンジャーことキンバリーはチアリーダーの中心的メンバーからの転落組。
ふたりとも若気の至り的な問題を起こし、それまで属していたヒエラルキーの頂点から弾き出されることになります。
一方、青レンジャービリーは自閉症スペクトラムで天才肌のナード系、黄レンジャートリニーは転校生、黒レンジャーザックはほとんど学校も行かないアウトサイダー系で、この3人は友達なしの典型的な非リア充組。
ジェイソン(赤)とキム(ピンク)以外はお互いにろくに名前も顔も知らなかった5人が、導かれるように同じ時間、同じ場所に集まり、チームとして地球を守る使命を託されることになります。
青春ポイントその2 パワレンメンバーの人種的多様性
ジェイソン(赤)のデイカー・モンゴメリーはオーストラリ出身の白人ですが、キム(ピンク)のナオミ・スコットはイギリス出身で、インド系ウガンダ人と白人のハーフ。ビリー(青)のRJサイラーは黒人で、トリニー(黄)のベッキーGはヒスパニック系。ザック(黒)のルディ・リンは中国生まれで、オーストラリアやカナダ育ちのアジア人。
昨今、“白すぎるオスカー”や”ホワイトウォッシュ”問題が話題になっているアメリカ映画業界から考えると、パワレンで起用されているメインキャストの国や人種の多様さは異例とも言えるほどですが、とても現代的ですし、“みんなと違う自分”に悩むことの多いティーンエイジャーたちには安心感を与える設定だなと思いました。
また、従来のチームものだと女子はひとりで紅一点というパターンが多いですが、パワレンでは女子はふたりで、さらにトリニー(黄)はレズビアンであることを示唆する描写があります。
この多様性に富んだキャラクター設定が現代のアメリカの若者には共感を呼んだらしく、登場人物たちと同世代のティーンエイジャー層からは高い評価を得たみたいです。
青春ポイントその3 みんなの心をひとつにすることで真のヒーローになれる!
ガイド役として登場するアンドロイドのアルファ5が、元祖パワーレンジャー・レッドのゾードン様に「彼らはティーンエイジャーです。つまり子供と大人の間です。」と説明するシーンがあるのですが、まさに子供から大人への成長段階である思春期の若者たちが感じている閉塞感や恐れ、悩み、葛藤が描かれていて、そんな時期をとうに過ぎた大人としては甘酸っぱいやら、ほろ苦いやらで眩し過ぎてたまらんかったです。
なお、唯一ビリー(青)は他の人と違って、学校生活の悩みに意識が向いてないようですが、彼のちょっと人と違うところや純粋さが、ストーリーを牽引する鍵となっていて、それが救いのようにも思えました。
ビリー以外の4人は、それぞれの状況は異なりますが、家族や友達との関係についての問題や将来への不安をかかえていて、自分の居場所はここにはない、という思いを抱いています。
そんな中、私が個人的にツボだったのはキム(ピンク)。
キムはチアリーダーとしてスクールカーストのトップ層に属していましたが、ちょっとした意地悪心で、「誰にも見せないでね」と言われて親友から送られてきた自撮りのヌード(と思われる)画像を当時の彼氏に転送して流出させてしまい、チアのチームメイトでもあった親友たちから絶交宣言されてしまいます。
もともと「自分って人とは違うし」と分かっていたふしのある、ビリー(青)、トリニー(黄)、ザック(黒)は友達がいないことや自分の境遇を受け入れていて折り合いをつけているようですが、元勝ち組のキムは自分を取り巻く状況が変わってしまったことを受け入れられておらず、「ここから逃げ出したい」と強く思っています。
ところで、このパワレンではびっくりするぐらい中々スーツが登場しないのですが、というのもスーツは着替える系ではなく、ゾードン様曰く「すでにお前たちの中にある」という意味不明の代物なのです。
スーツ姿に変身するには、頭をクリアにし精神を集中させ、5人の意識をひとつにして、なんとかかんとかっていうコアエネルギー的なものとつながらないといけないそうなのですが、煩悩まみれのティーンエイジャーには難題で、いつまで経っても変身できないんです。
観てるこっちも、もう残り時間少ないのにスーツはいつ出てくんだよと焦るほど。
だもんで、5人が気持ちをひとつにするならお互いに分かり合わないとねっつって、キャンプファイヤー囲んで、“あらためまして自己紹介”的なことをすることになるんですが、みんなが「実はわたしは・・・」と自分の問題を告白するなか、キムだけは打ち明けることができないのです。
キムは自分の犯した罪を悔いてひたすら自分を責めていました。
みんなが変身できないのはあたしが足ひっぱってるから。あたしは友達にひどいことした、あたしは悪い子で、地球を救うヒーローには相応しくないんだ、と。
後日、キムはたまらずジェイソン(赤)に胸の内を吐露するのですが、そのときジェイソンがキムにアドバイスする言葉がけっこういいなと思いました。
Just be the person you want to be.(なりたい人間になればいいんだよ。)
罪を犯したとき、人は自分を責め続けることで、知らず知らず自らに罪人のレッテルを貼り、足枷をはめ、檻に閉じ込めてしまいがちです。
自分はあんなことをした悪い人間だから○○には相応しくない、○○する資格がない、価値がない、できっこない、やるべきじゃない・・・。
罪を償ったり反省することは必要ですが、いつまでその罪に自分を縛りつけるのでしょう。
自分に十字架を背負わせ続けることは、選択肢や可能性を閉ざしてしまうことにもなります。
特にまだ高校生くらいの若者が、そのように自分を責めることで未来への希望を失い、思うように生きられないのは悲しいことです。
Just be the person you want to be.
いつまでも自分を責め続けなくていい、なりたいと思う人間になっていい。
某みつを先生のお言葉のようですが、若い子らにこういう言葉をかけてあげるのって必要だよな、と感慨深く受け止めたセリフでありました。
自分の犯した罪と向き合い、それを乗り越えない限り、どこへ逃げてもその罪からは逃れられません。
最終的に赦しを与えられるのって結局、自分自身に他ならないのかもしれません。
さて、そんな青春丸出しの悩める5人ですが、すったもんだの末になんとかスーツ姿に変身することに成功します。
鍵となるのは、“他者を想う気持ち”や、”自己犠牲の精神”。
昭和の団体競技のスローガンよろしく、”ワンフォーオール、オールフォーワン”。
つーか、”愛”、愛なんですよ!
だからスーツは「すでにお前たちの中にある」なんですよ。
この辺、超アツいです、マジで!
青春なんですよ!
Stand By Meなんですよ!(笑)
結果的にパワレンは、アメリカでは期待ほど興行が伸びなかったらしく、続編ヤル気満々のエンディングでしたが、その先行きについてはいったん保留となっているようです。
とはいえ、おもちゃはけっこう売れたとか。たしかに、最後のロボ合体のシーンとか観たら、こりゃおもちゃ売れそうだなって思いました。(笑)
参考:日本のゴレンジャーは、どのように世界のパワーレンジャーになったのか
ちなみに我々の観賞時、座席は8割くらい埋まっていて、客層も見事に若者から大人まで、男性やや多めでしたが女性もけっこういて、バランスよい感じでした。
従来の日本のスーパー戦隊ヒーローものファンの心をつかめたかどうかは定かではないですが、青春映画として、いい歳した大人がセピア色の思い出に思いを馳せたり、失われた青春を追体験するもよし、若者が主人公たちに自分を重ね合わせて胸を熱くするのもよし。幅広い世代が楽しめる優良な娯楽作品だと思いました。
でも、強いていえば主人公たちと同世代の若者たちに観て欲しい作品ですね。
このブログ読んでる人にいないでしょうけど、ティーンエイジャー(笑)
映画『パワーレンジャー』は絶賛上映中 http://www.power-rangers.jp
なお、ザック(黒)のルディ・リン君は2018年に米で公開予定のDC映画『Aquaman 』に出演しているみたいです。注目!
(H)
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