2017年11月17日金曜日

感想:ノクターナル・アニマルズ ーゾッとする世界ー

 今年の初め、ゴールデングローブ賞で発表された助演男優賞を
 アーロン・テイラー・ジョンソンが受賞してから、
 日本公開を望んでいましたところ、無事公開になったので行ってきました。


 
率直に言って、
心身ともにエネルギーの充填されている状態の時に観ることをお勧めします。


見終わった後の、疲労感がすごいです。
もちろん個人的な意見です。
最初から最後まで見入っちゃうんで、疲れるのなんの・・・
内容も内容ですしね。
ただ本当に俳優陣の力を感じる映画です。
配役が素晴らしい。

オープニングの映像の衝撃がすごいのと、
その映像がどう本編につながっていくのか、
結構な尺見せられている間に疑問でしたが、
なるほどなーという作りで、つなぎもスムース。
しかしながら、見終わった今思うと、
その映像でエイミー・アダムス演じる
アートギャラリーのオーナーのちょっと理解しがたい部分
不快な印象を受ける部分が
垣間見えていたのかもしれません。




ところで
観る前は今日はこれを観て、ブログ更新しようと意気込んでましたが、
観終わった後、何も書きたくない、となってしまい何日も経過してしまいました。
以後ネタバレありますので、ご了承ください







先ほども書いたように、
そもそもオープニングからして、驚きで、
全体の中のつかみのところで???となり、
この空気というか雰囲気の中どういう風に本編がスタートするんだろう?と。
いざスタートしてみたら、なるほど、連鎖していくようにぬるっとスタート。
クリエイティブな部分がつながって始まり、
それはその後も同じように何かと何かが繋がって場面が転換されていきました。
イメージの連鎖。
そのやり方は面白いけれど、内容はハード。
正直どんどん辛くなる。
でも見届けないと、
結末が気になる。


母親に似たくないと思うほど、
彼女はどんどん母親に似る。


どんどん毒がまわるように、
彼女は辛そうだ。
人生に満足していない。
はたから見ると成功しているけれど…
自分の中にぽっかりある穴に気づいた瞬間から
その穴が埋まることはない。
何が起きようと。

眠ってないわね?
と確認する女性が印象的で、
この質問で彼女がいかに眠らないかが描かれ
タイトルと強くつなげている印象を受けた。




途中でこちらの脳が引き出してきた映画は
「複製された男」
それから、リーアム・ニーソンが作家を演じた
「サード・パーソン」




なぜ別れた元妻に、
書いた作品を送ったのだろう。
復讐なんだとしたら、
最後まで観るとわかるけど、
成功しているように感じた。

個人的な印象ですが、
ジェイク演じる元夫のエドワードは
アーロン演じるレイを彼女の暴力性に当てはめ、
彼女によく似た小説内の妻が、
彼が信じていた才能も含めた彼女、
そして小説内の娘は子ども、
とすると
彼女の暴力性により、
彼女の才能も子どもも奪われたと描いていていたように感じた。
ひいては小説の男の感情である自分を伝えたかった。
何か起きなければ気がすまない。
という彼の思いを、
小説を通して認識した彼女は、
元夫が書いたものが
深く深く刺さり、
彼女をより不安定なものにさせただろう。

そして会いたいという気持ちにさせた。
おそらくこの段階で元夫は勝ちを得た。

ただ、最後まで彼女が店で待つ様子を見ていないと
そこまでの復讐が成し遂げた感覚はないと思う。
とすると、彼は何処かで見ていたのか?
あの、人の良さそうな元夫がそこまでするとは思えないが。
自分が彼女から受けた仕打ちを、
同じように彼女にすることは出来ないけれど、
そうされたことを小説によって彼女に当てつけることで
何をされ、どんな気持ちだったかを伝えると同時に
彼女にもその仕打ちをしたかったのかもしれない。
愛が、どうしようもなくなっていびつな愛に変化した。


この作品、俳優陣のすごさがよくわかります。
アーロン・テイラー・ジョンソン君も頑張っておりました。
外で裸体でトイレって衝撃姿も披露。
彼の登場は怖かった。

相変わらずジェイク・ギレンホールは、微妙な表情するし、この表情すごい。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督との進行中という企画も楽しみ。
そしてエイミーアダムスのすごさよ!
自分の中の穴に気がついて、前にも後ろにも進めなくなっているスーザンのあの感じ。
しかも過去のシーンではちゃんとそこにとどまる前の状態を演じている。
そして現在のとどまっている状態と、
最後のシーンでの微妙に微笑んだかに見えた表情。
進めたのか・・・。

素敵な女優さんだ。

そしてそして、この作品でさらに素晴らしいのは
マイケル・シャノン。
彼が演じたボビーが、小説の中の読者の救い。
彼は何なのだろう。
エドワードにとって小説そのものなのかも・・・。

いろいろ頭の中を整理しつつ書いたけれど、
この映画、トム・フォード監督の美のライン、登場する見事なカーブだったり
カラーだったりを感覚で観る映画なのかもしれないとも思ったり・・・。
そういうところも含めて、

ゾッとする。






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