＜感想＞映画『ドリーム』

超おすすめの映画です！

第89回アカデミー賞の作品賞ノミネート作品にも関わらず、いつまでたっても日本での公開情報が出てこないのでDVDスルーかと諦めてたので、こうして劇場で観られて嬉しい限りです。（同じく作品賞ノミネーションの『Fences』はDVDスルーだったしね。）

『ドリーム』は実話に基づいて書かれた本『Hidden Figures: The True Story of Four Black Women and the Space Race』を映画化した作品。
本のタイトルでは “４人の黒人女性たちと宇宙開発戦争”ってなってますけど、映画で出てくるのは３人でした。

※以下、そんなにネタバレないと思いますが、内容に触れます。

1957年、米ソ冷戦の最中、ソビエトは世界初の人口衛星 “ スプートニク ” を打ち上げ、軌道にのせることに成功。

この技術がいずれ軍事に使われることを危惧したアメリカも宇宙開発を急ぐようになる。

映画の始まりは1961年。多くの黒人女性が “ コンピューター ” として、バージニア州にあるNASAのラングレー研究所で働いていました。

NASA Langley Research Center

当時の “ コンピューター ” の意味は “ 計算士 ”。現在のようにコンピューターマシンがまだ使われていなかったため、研究・開発に必要な数値の算出は人間が行っていたのでした。

また、当時のヴァージニア州では人種による分離政策が残っており、バスの座席や図書館、水飲み場などの公共施設や職場のトイレは、白人用と非白人用が分けられていました。

NASAで働く黒人女性たちも、施設内の西棟と呼ばれる建物の地下にまとめられ、部屋の壁には「Colored computer」というサインがかけられ、彼女たちが使うトイレにも「COLORED LADIES ROOM」という看板が掲げられていました。

この物語の主人公は、キャサリン、ドロシー、メアリーの３人。

人種や性別による差別や偏見と戦いながら、才能を発揮しキャリアを築きあげ、NASAの研究開発に多大な貢献をした女性たちです。

とにかくね、この女性たちがめちゃくちゃかっこいいんですよ。

キャサリンは文句無しの数学の天才で、その能力はNASAの精鋭の中でも群を抜いている。ドロシーは数学者としての能力だけでなく、時代の変化を読み取る先見の明があり、皆を取りまとめるリーダーとしての素質も備えている。メアリーはNASAで初めてのエンジニアになるという夢を叶えるべく毅然とした態度で差別と戦う。

まず “ 黒人 ” という人種が障壁になる時代で、さらに “ 女性 ” という性別による足枷もあるる。
彼女たちのいる場所には先に進む道がないんだよね。「前例がない」そう言われて、いつも目の前でピシャリと扉が閉ざされてしまう。
だけどそこで諦めずに彼女たちは自分で道を切り拓いていくんですよ。

「前例」については、メアリーが裁判長相手にひと演説するシーンがあるのですが、めっちゃくちゃシビれます。かっこよくて心が揺さぶられるシーンで、あたしゃ号泣しましたよ。

このメアリーは割と勝ち気な性格として描かれているのですが、名言が多くて随所で泣かせてくれます。

予告動画にも含まれているからチョロっと言うと・・・

メアリーは職場の上司に能力を見込まれて、エンジニアの育成プログラムを受けることを勧められるも、黒人の女性がエンジニアになんかなれる訳がない、と尻込みする。それを聞いた上司が「もし白人の男性だったエンジニアになりたいか？」と聞くと、メアリーは「いいえ、もしそう（白人男性）だったら、とっくにエンジニアになってますから。」と答える。

かっけー、マジかっけー！思わず「いよっ！メアリー！！！」ってかけ声かけそうになりましたよね、スクリーンに向かって。

なお、メアリー役のジャネール・モネイは、『ドリーム』と同じ2016年に（アメリカで）公開されてアカデミー賞作品賞を受賞した『ムーンライト』にも出演している注目の女優さんです。

ちなみに、アカデミー賞授賞式のときのジャネールのドレスがめっちゃカッコよくて、ﾜﾀｸｼ的ベストドレッサーでした。

https://www.vogue.com/?us_site=y

さらにジャネールだけでなく、マハーシャラ・アリも『ムーンライト』と『ドリーム』両方に出演しています。

現在Netflixドラマ『ルーク・ケイジ』（マハーシャラ・アリはコットンマウス役で出演）を絶賛視聴中のﾜﾀｸｼの中では超熱い俳優のひとりであります。

数々の賞で助演男優賞を総なめにした男。

『ムーンライト』ではジャネール演じるテレサと夫婦？の役でしたが、今回はタラジ・P・ヘンソン演じる主役のキャサリンのお相手役（ややこしいな）。


そして、キャストの注目がもうひとりいまして、キャサリンが配属になった部署の主任ポール役のジム・パーソンズ！

コメディドラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』のシェルドンですよ！シェルドンがNASAの研究員役なんて最高過ぎる設定じゃないっすか〜！！！

『ドリーム』ではキャサリンの能力に圧倒されつつも、負けを認めるのが嫌で辛く当たる嫌な奴の役なんですが、シェルドンだと思うと憎めないっす。
『ドリーム』でもギークっぽさがダダ漏れでしたよ。

さらにもうひと方、ﾜﾀｸｼが注目したのは、偏見丸出しのムカツクお局様みたなキャラクターのミッチェルを演じたキルスティン・ダンストです。

実は途中までミッチェル役がキルスティンだと気がつかなかったんですがね・・・なんというか、随分と雰囲気が変わられたみたいで。

「この人めっちゃキルスティン・ダンストに似てるわー」って思いながらも、本人とは思わず、終盤になってあれ？まさか？ってなって、エンドクレジットで衝撃を受けるという展開でした。

ソフィア・コッポラのミューズだった頃は遠い昔って感じです。時代の流れを感じました・・・。

とはいえ、この胸くそ悪いお局役がね、すっごいハマり役で、今後はこういうイジワル路線で行けばいいんじゃない？なんてエラそうに思いましたけども。

ミッチェルは、オクタヴィア・スペンサー演じるドロシーの行く手を阻むキャラとして、しばしばドロシーとやり合うのですが、後半にドロシーがミッチェルにガツンというシーンは痛快です。

胸のすく思いがしましたが、一方で差別や偏見について考えさせられる深い一言でした。

今作は、人種差別が描かれている作品ですが、暗かったり重かったりするものではなく、偏見や差別にぶつかりながらも、逆境の中で道を切り拓いていくパワフルな女性たちのストーリーなので、勇気をもらえて元気が出ます。

子供さんから大人まで、老若男女楽しめて感動できて、観終わったあと素直に「ああ、いい映画だったね〜」と言える良作だと思いました。

またエンディングの曲がいいんだ、これ。

Kim Burrell, Pharrell Williams 　“ I See a Victory ”

映画『ドリーム』は絶賛公開中

公式ウェブサイト http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/index.html

(H)