2017年10月26日木曜日

<感想>映画『女神の見えざる手』

当初はそんなに興味なかったんですが、チラシやポスターのジェシカ・チャステインがあまりにも美しかったので、思わずジャケ買いならぬジャケ観賞。


真っ赤なリップに、ハイブランドの服をビシっと着こなし、13cmはあろうと思われるハイヒールを履き闊歩する姿に惚れ惚れしました。


よく、切れ者で油断ならない人に対して「あの人は敵に回したくない」とか言いますが、リズことエリザベス・スローンに関して言えば、「敵に回したくないし、味方にもしたくない」タイプ。

リズは百戦錬磨のやり手のロビイスト。敵はもちろんのこと、味方にさえも手の内は全て明かさず、ときに不意打ちを食らわせ利用する。

ロビイストって何よ?って思われる方もいるかもしれませんが、この映画自体がロビイストの仕事の説明にもなっているので、映画を観ながら “ロビイストおよびロビー活動とはなんぞや?” ということも学べちゃいます。

公式サイトにこんな動画もあがってます。


大手のロビイスト会社コール=クラヴィッツ&Wで働くリズ(ジェシカ・チャステイン)に、銃推進派団体の代表サンフォードから、女性の銃支持者を増やすべくロビー活動を行ってほしいという依頼が舞い込む。
銃の購入に関する規制法案が議会に提出され、近く審議にかけられるため、法案が可決されるのを阻止するのが彼らの狙いだった。

リズはその依頼を一笑に付すが、上司から引き受けないならクビにすると言われ、自分に付いてくるという何人かの部下を引き連れ、誘いを受けていたシュミット(マーク・ストロング)の会社ピーターソン=Wへ移籍し、かつての仲間たちと対決することになる。

政治的な主題を扱ったサスペンスドラマで、主役のリズが仕掛ける巧妙な戦略と、ジェシカ・チャステインの迫真の演技にグイグイ引きこまれ、めちゃくちゃ面白かったです。
台詞の量がハンパじゃないし、テンポが早く、観ているこちらもボヤボヤしていられません。

※以下ネタバレ注意です。





あえてなのか分かりませんが、邦題然り、冒頭にリズが語る台詞然り、最後にどんでん返しの一手(見えざる手)が残ってることが最初からバレバレなんですよね。

なので、途中、伏線となる箇所でも「はは〜ん、これはリズの罠だね」とピンときちゃったり(ジェーンの件とか)、後半リズがどんどん追いつめられていく展開になっても「これからドカンとすごい手出すんでしょ?」ってな感じで、ハラハラドキドキが60%引きくらいになってしまいました。

まあ、具体的に何が出てくるのか分からないし、それだけがこの作品のキモではないので十分に楽しめるんですが、ついつい「どうせ全て織り込み済みなんでしょうよ」という斜に構えた姿勢になっちゃって、その点は少し残念でした。

今作で一番気にいった点は、ジェシカ演じるリズのキャラクター。
銃規制のために尽力し、強大なパワーを持つ組織を相手に戦う、とかいうと高潔な精神を持った、まさに “ 女神 ” みたいな女性をイメージしますが、リズは仲間もドン引きするようなえげつない手段をバンバン使う計算高い策略家です。

シュミットの誘いを受けたのも、銃規制法案を通したいっていう自身の信念のためってのもあるだろうけど、より難しいゲームで勝利したいっていうゲームのプレイヤーとしての好奇心みたいのが強かったんじゃないかと思います。

映画では、女性キャラクターは強がってても弱い部分があったり、スキがあったりする生温い描かれ方しがちですが、リズは勝利にこだわるストイックな女性として描かれているところがいいんですよね。
率直で無神経なようだけど、それも分かってて勝つためにあえて残酷ともいえる手段を取る。

とはいえロボットみたいな冷血漢でもなくて、人間的な脆さも持ち合わせているキャラクターとしても描かれていますので、親近感は覚えないまでも、共感できる余地はある。


どんでん返すことは予測がついちゃったけど、それでも最後の “ 激震 ” は、超スカっとします。
相手が切り札を出し、リズを徹底的に追い込み勝利を確信させた後に、揺るぎない証拠となる超ビックな自分の切り札を出す。
全てをかけたリズの作戦、あっぱれとしか言いようがないです。


名前こそでなかったですがリズが相手にしていた銃推進派の団体って「全米ライフル協会(NRA)」のことですよね。
私はNRAについてはマイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2003)で初めて耳にしましたが、勝手に中西部あたりの銃の狂信的な支持者の団体とか思い込んでました。
ところがどっこい約500万人の会員を有し、合衆国の議会に多大な影響を及ぼす超巨大組織だったんですね。
他にもディベートのシーンで出てくる「憲法修正条項第2条」のこととか、いろいろと勉強になる内容でした。


ところで、ひとつ謎があって、リズが買っていたエスコートサービスボーイのフォードの件。
仕事に全ての時間を費やしているリズは、エスコートサービスで男を呼びつけて、サクっと欲求を満たしていた。
あるとき、ふたりは偶然鉢合わせをする。話しかけてきたフォードと、面識のないフリを決め込むリズが言い合いになっていたところを敵方のメンバーに見られる。
リズが金で男を買っていたという証言をさせるために、敵方が聴聞会にフォード出させるんだけど、彼はなんと嘘をついてリズに有利になる発言をしたんですよね。これには敵もリズもびっくりっていう展開だったんですがね。

偶然鉢合わせた後、リズは一度フォードを “ お仕事 ” でホテルに呼び出したんだけど、そのときちょっと参ってるところ見せたんですよね。取り乱した様子で、行為を途中で止めて、お金だけ払って帰らせた。
最初はリズも人の子っていう人間的な側面を演出しているのかと思ったんですが、最後にどんでん返ったあとに、まさかあれも作戦か?と疑問に思ったんですよ。

リズとしては、フォードとの関係はもちろん違法だし、できれば秘密にしておきたかったけど、公共の場で鉢合わせてしまったからには敵に見られている可能性はぬぐえない。
追いつめられれば相手は自分へ個人攻撃をしかけてくることを予見していたというリズですから、フォードの件を敵が持ち出してくる可能性は予測できたはず。
だから、リズはフォードの性格を見抜いていて、わざとちょっと弱っている自分を見せて、自分に同情させるよう仕向けたのかなって。

マヌチャリアンが襲われたくだりは想定外っぽかったけど、ぶっちゃけ一体どこまでがリズの想定内で、どこまでが策略なのか、どれくらいリズが抜け目のない人なのかがちょっとよくわからなかったんですよね。

もしくは、フォードの証言の件は、リズがみくびっていた類いの人こそ彼女が予見できないような行動をとるという、皮肉的なエピソードだったのかもしれません。

そのへんも踏まえてもう一回観たい気もします。

なお、TOHOシネマズ シャンテに限り「究極の一手を検証する リピーター割引」なるものをやっていて、2回目以降の観賞が1,100円になるそうです。

興奮に包まれる奇跡のラスト。観終わって、あの“一手”を検証したくなった方に、
TOHOシネマズ シャンテ限定で、上映期間中リピーター割引を実施します。
『女神の見えざる手』の座席指定券(半券)ご提示で、2回目以降の鑑賞料金が1,100円になります。
(TOHOシネマズ シャンテの有料鑑賞のみ対象/窓口購入のみ対象/
ご提示いただいたご本人のみ対象/ご購入後の変更・払い戻し不可)




映画『女神の見えざる手』は絶賛公開中
▶︎公式ウェブサイト http://miss-sloane.jp


主演のジェシカ・チャステインの次回作は12月15日(金)公開の『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』。
▶︎公式ウェブサイト http://zookeepers-wife.jp

ジェシカはこの作品のプロモーションで、11月下旬に初来日予定だそうです。
生ジェシカぜひ見てみたい!さぞ美しかろうよ。

(H)

0 件のコメント:

コメントを投稿