2017年10月28日土曜日

<感想>映画『エタニティ 永遠の花たちへ』

画面の隅に至るまで、全てのシーンが絵画のように美しく、アートを観賞しているような感覚になる映画でした。

トラン・アン・ユン監督作品は『ノルウェイの森』(2010)ぐらいしか観たことないので、詳しいことは存知ませんが、今作『エタニティ 永遠の花たちへ』での “ 美 ” へのこだわりには凄まじいものを感じました。

役者のヘアメイクや衣装はもちろんのこと、小道具やインテリア、草木や湖の水、光、色彩、なにもかもがはっとする程美しい。


公式ウェブサイトより(絵じゃないのよ)

特にユン監督が映し出す少女の美しさは神がかっていて、柔らかな白い肌に紅潮した頬や唇、恥じらいと好奇心を秘めた瞳、表情、見ているだけでうっとりとした幸福な気分になる程。(ちょっと変態っぽい?)
その美しさは、まるでモネやルノワールといった印象派の画家たちの絵画のようでもありました。


さて、この作品ちょっと変わっていて、セリフは少なく、ストーリーはナレーションの語りによって説明され、映像が本の挿絵のように感じられるのです。

ヴァランティーヌ役を演じたオドレイ・トトゥは「すべてのショットはあまりに審美的に構成されていたので、自分には本物らしさが欠けているのではないかと感じたほどです。私はただセットの一部になりました。何かになろうとさえしませんでした。」と語ったそうなのですが、確かにこの映画の主役は場面そのものなのではないかと思わせるほど各カットが完璧なまでに美しく、登場人物すらセットの一部でしかないというのは大いに納得です。。

そんな訳でユン監督は役者の動きに関しても相当細かく演出したそうで、ガブリエル役のベレニス・ベジョはあまりにもやり直しが多くて、撮影中キレたこともあるのだとか。
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※以下、内容に触れます。

ストーリーは至って単純。
3人の女性が結婚して、子供を産み、夫や何人かの子供を亡くす、ということが繰り返される。

へ?そんだけ?って感じですが、それでもかなり感動する映画なんですよ。
観終わって劇場を出るとき、けっこうお客さんたち鼻をグスグスとさせてました。



ブルジョワ家には娘が5人生まれた。うち2人は病気で亡くなり、3人のうちのひとりヴァランティーヌはジュールと結婚をした。

始まりはオドレイ・トトゥ演じるヴァランティーヌ。
結婚し、7人の子供をもうけるが、一人は生まれて数時間で亡くなり、最初にもうけた双子の男の子たちはまだ若いうちに出征して戦死。
いずれこの子もたくさんの子供を持つだろうと信じて疑わなかった長女のマルゴは修道女となり、ヴァランティーヌの元を去る。何年かのちに髄膜炎で死去。
次女エリザベトは思春期にさしかかった頃に病に倒れ若くして亡くなる。
結婚20年目には夫とも死別する。

ヴァランティーヌは非常に母性に溢れていて、子供を持つことに喜びを見いだしているような女性。長女が神の道へ入ると決めたときは、一生子供を産まないという娘の選択にひどくショックを受けていた。

大人へと成長したヴァランティーヌの息子のひとりアンリは、幼馴染みのマチルド(メラニー・ロラン)と結婚する。
マチルドはヴァランティーヌの意志を引き継ぐように、多くの子供をもうける。
しかし、何度か流産を経験し、その後ふたたび妊娠した最後の子マリーを出産後、40歳で亡くなってしまう。

マチルドの従姉で親友のガブリエル(ベレニス・ベジョ)はシャルルとお見合い結婚をする。近い時期に最初の子供を出産したマチルドとガブリエルは、お互いに寄り添うように支え合いながら暮らした。
ガブリエルは病気で息子をひとり失う。しばらく後、夫のシャルルを海での事故(自殺?)で亡くす。

マチルドの死後、アンリとガブリエルは一緒になり、たくさんの子供に囲まれて暮らすこととなる。
その子供たちが成長し、やがて恋に落ちる。


淡々と誕生と死が繰り返されて、そうやってどんどん命が受け継がれていく様が描かれています。

ヴァランティーヌは長生きをし、自分よりも先に子供や孫が若くして亡くなるのを何度も見送りましたが、それでも彼女の血は現代に至るまで脈々と受け継がれていき、生と死が繰り返されていく。

生命のグレートジャーニーとまではいかないものの、こうやって繋がれてきたんだなぁと自分の命に思いを馳せずにはいられません。
当たり前のことなんだけど、その深遠さをあらためて感じさせられました。


また、ヴァランティーヌやマチルド、ガブリエルは裕福な家柄のようなんだけど、花が咲き乱れる美しい庭を持つお屋敷に住んでいて、そこがまるで天国みたいに美しいんだよね。
子供たちが庭で遊んでいて、それを夫婦が温かく見守る画なんて、まるで幸せの象徴みたい。
だけど、そんな天国みたいな暮らしの中でも死は容赦なく訪れる。
誰かが亡くなったあと、若く幸福に満ちあふれていた輝かしい瞬間の回想シーンが挟まれる。そのコントラストが美しくも切なくて泣けてくる。


予告編

セットデザイナーのインタビュー

劇中に挿入される音楽は主にクラシックの有名曲で、ドビュッシー、バッハ、ベートーベン、ヘンデル、リスト、ラヴェルなど。
この音楽がかなり心地よくて、穏やかな気分になり、美しい映像と相まって、観賞中は絶対脳からα波出てるたんじゃないかと思われます。


『エタニティ 永遠の花たちへ』は絶賛公開中
公式ウェブサイト http://eternity-movie.jp
レディースデーのシネスイッチで観賞しましたが、けっこう空いてましたよ。

(H)

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