2017年9月23日土曜日

<感想>映画『ダンケルク』

実は観るつもりなかったのだけど(シリアスな戦争ものは苦手なので)、最近発足した職場の映画部(観賞専)の今月のお題が『ダンケルク』だったので、行ってきました。

さて、『ダンケルク』を観るにあたって皆様の頭を悩ませているのが劇場問題ではないでしょうか。
『ダークナイト』(2008)、『ダークナイト ライジング』(2012)、『インターステラー』(2014)に引き続き、『ダンケルク』もクリストファー・ノーラン監督こだわりのIMAXカメラで撮影されたそうです。
しかし、IMAXフィルムで撮影された映画はそれに対応した劇場で観ないとその魅力を十分に味わえないんだとか。

え、なんで?と思い、映画の撮影や技術的なことに関しては完全に無知な私が、必死のパッチでゼロからかき集めたにわか情報は以下のとおり。

・映画の撮影に使われるフィルム(幅)には35mmと70mmがある。
・通常は35mmフィルムが主流。
・IMAXフィルムは通常の70mmフィルムよりもさらに大きい。
・IMAXフィルムは1コマあたりの面積が広く記録可能な情報量が多くなるため、画像解像度的なものが高くなり色味や映像がきれい。

wikipediaより

・IMAXフィルムカメラは巨大で費用も高額になるため、あまり映画の撮影で使われることはなかった。
・日本の映画館のIMAX劇場はデジタルで、フィルムシアターは残ってない(映画館以外の施設ならいくつかある)。
・マイケル・ベイのお気に入りはIMAX 3Dデジタルカメラ
・クリストファー・ノーランのお気に入りはIMAXフィルムカメラ。
・35mmフィルムとIMAXフィルムの上映では画面アスペクト比(縦の長さを1としたときの横の長さとの比率)が異なる。(35mmだと画面が横長で、IMAXフィルムだと正方形に近い)
・IMAXだからといってIMAXデジタルシアターのスクリーンがIMAXフィルムのアスペクト比に対応している訳ではない。
・日本でIMAXフィルムの比率に対応しフルサイズで観られるスクリーンは、109シネマズ大阪エキスポシティのIMAX次世代レーザーのみ。
▶︎参考:109シネマズ ニュース

要するに、
★通常の劇場で『ダンケルク』を観ると、上下がごそっとカットされる。
★IMAXデジタルシアターなら通常スクリーンよりちょっと切られる部分が少なくなるもののフルサイズではなく、やはり上下がカットされる。
★日本でフルサイズで観たいなら、大阪エキスポシティに行くしかない。
★さらにもっとこだわるのであれば、海外のIMAXフィルムシアターで観るのがベスト・オブ・ベスト
こんな感じです。

参考までに、「ダンケルク」をフルサイズで観れられる世界のIMAXスクリーンはこちら。
▶︎IMAX "EXPERIENCE DUNKIRK IN IMAX 70MM FILM AND IMAX WITH LASER"
International枠少ないよね・・・フィルムシアターの方はどんどん減っていってるそうな。

そんな訳で、我々が仕事帰りにぷらっと大阪だのタイだのオーストラリアだの行けませんので、大人しく都内のIMAXデジタルシアターで画面上下カット版を観賞してまいりました。


※以下、ネタバレ含む感想です。

『ダンケルク』を観終わったあとの感覚、『ゼロ・ダーク・サーティ』(2013)の観賞後と似ているなと思いました。胸をぎゅっと押しつぶすような重苦しさと虚無感が残り、ちょっと虚ろになる感じ。

舞台は第二次世界大戦下の1940年。
1939年にポーランドに侵攻したドイツ軍は、翌年オランダ、ルクセンブルク、ベルギーへと勢力を延ばし、さらにそこからフランスへと進軍。
それに対抗するフランス・イギリスの連合軍は、フランス北部の町ダンケルクに追いつめられ、ドイツ軍により包囲されていた。

ダンケルクの浜辺でイギリス軍の救助の船を待つ兵士と、彼らを救うべくイギリスからダンケルクへ船で向かう一般市民、空からの援護に駆けつけた空軍のパイロット、の3つの視点から「ダイナモ作戦」と呼ばれる撤退作戦を描いたストーリー。

陸、海、空はそれぞれ1週間、1日、1時間とタイムスパン異なるため、最初はちょっと混乱しますが、そのうち慣れます。
空のシーンであれって?思ったことが後に海のシーンで説明されていたり、海のシーンで謎だったことが陸のシーンで、これか〜ってなる、みたいなノリで、それぞれの話がつながっていき徐々に全容が明らかになっていきます。

ノーラン監督もインタビューなどで仰ってますが、『ダンケルク』は史実をベースにしたサスペンススリラーです。

戦争を描いていますが、生々しい戦闘シーンはなく、目を覆いたくなるような血みどろの描写や残虐な描写もありません。
しかし、観ていてものすごく苦しく辛い気分になります。
なぜならこの作品、臨場感が半端ないから。

見えない敵からの、どこからくるとも分からない攻撃や(ドイツ兵の姿はほとんど出てこない)、じりじりと包囲網が狭まってくる中での度重なる脱出の失敗。
目視できるほどの距離にある祖国へ帰ることができないという苛立ちや絶望。
兵士たちが味わっていたであろう焦燥感や恐怖がビシバシ伝わってきて、観客は否応なく極限状態へ引き込まれます。

また、BGMにチッチッチッチという時計の針の音が終止流れており、その音も緊張感を高めるのに大いに役立っていました。


今作はメインキャストに若い新人俳優を起用したことでも話題になりましたが、新人・若手・中堅どころ・ベテランの案配が絶妙で、俳優さんたちみんな素晴らしかったです。
中でもやはりベテラン組の渋みが傑出しており、特に私がぐっときたのは船で救出に向かう民間人代表のミスター・ドーソン。演じているのは『ブリッジ・オブ・スパイ』(2016)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したマーク・ライランス。


機体は見ずともエンジン音だけで戦闘機がドイツのメッサーシュミットか、イギリスのスピットファイアか判断したり、ダンケルクへ向かう途中、海で救出した挙動不審な兵士(キリアン・マーフィー)がPTSDであることをいち早く察知し落ち着いて対応したり、敵機が近づいてきたときに「攻撃する直前に急降下するはずだ」と冷静な判断を下し危機を回避したりと、ほとばしる“ただものじゃない”感。
感情を制御した落ち着いた人柄のドーソン氏ではありますが、彼の複雑な表情や身のこなしから様々な思いがうかがえ、深みのあるキャラクターを見事に演じておられました。


さて、実際のダンケルクには英仏連合軍の兵士約40万人がいたそうなのですが、wikipediaによると33万人ほどがこの作戦で救出されたそうです。
映画ではもうちょっと小規模に感じられましたが、ノーラン監督が徹底的に実写にこだわり、いっさいCGを使わなかったため(嫌いだから)、多少アレンジされているみたいです。
兵士の人数の割り増しにハリボテ使ったりとか。

作品の中では援護に向かうスピットファイア(戦闘機)がたったの3機で、少なっと思ったのですが、これも実際はもっと沢山来たそう。本物のスピットファイアで撮影するために3機という設定にしたとか。

また、ダンケルクの救出作戦の特徴的なところは、民間の船や民間人も救出に参加した点なのですが、この民間の船舶も実際にダンケルクへ救出に向かった船を撮影に使ったそうです。
使わせてもらえたのもすごいですが、監督の徹底したこだわりぶりに圧倒されます。
▶︎参考:ナタリー「クリストファー・ノーラン インタビュー」



IMAXのドでかいカメラを実物のスピットファイアに乗っけて撮影とか凄過ぎです!


実際に映画を観ると、やはり監督がこだわりにこだわった映像は壮大でめちゃくちゃ美しかったです。
『ダンケルク』は、とにかくIMAXで観るべき作品。
近くにIMAX劇場がないなら、いっそ旅行を兼ねて大阪行っちゃった方がいいんじゃないでしょうか。私も大阪行きたいっす。


新作映画がネットで配信されるこのご時世、あくまでフィルムにこだわり、映画館で観ることがベストな作品をあえて創りだしたノーラン監督の試み、個人的には大いに支持します。
やっぱ映画は映画館で観るのが最高に楽しいし、大画面に映し出される美しい映像ってそれだけでも感動的ですよね!

映画『ダンケルク』絶賛公開中です。
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

(H)

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