2017年1月31日火曜日

<感想>ホームレス ニューヨークと寝た男

主演?のマーク・レイさんが舞台挨拶に登壇すると聞いて、観に行ってきました『ホームレス ニューヨークと寝た男』

公式ウェブサイト:http://homme-less.jp

ウィキペディアによると、『HOMME LESS』(原題)は、2014年のキッツビュール・フィルム・フェスティバル(オーストリア)で初上映され、その後、Doc NYCにて審査員大賞を受賞。

アメリカの劇場で公開されたのは2015年8月7日。

その時かなり話題になったのか、日本では公開未定だったにも関わらず、ネットの記事などでよく紹介されていた。

私が最初に読んだ記事はこれ→ ELLE ONLINE

この度、アメリカでの公開から1年半が経過しましたが、晴れて日本でも公開となり、マーク・レイご本人も来日。これは見に行かねば、と駆けつけました。



※以下ネタバレ含みます。


まず、最初の率直な感想は、「なんか思ってたのと違った」でした。


これはまあ、私の勝手な妄想というか思い込みのせいであり、作品の問題では全然ないんだけど・・・思ってたのと違ったけど、それはそれで面白かったです。

そもそも、どういうの想像してたかっていうと、マークさんがもっと”悟ってる系”の人かと思ったのですよ。

ちなみに公式サイトのイントロダクションを一部引用すると

豊かな人生とはなにか。幸せとはなにか。そもそも、人生において成功するとはどういうことなのか?経済的に安定した堅実な生活を選ばず、何にも縛られない自由な人生を選んだ一人の男の小さな人生から生きるヒントが見えてくる。


これを読むと、
”あえてホームレスという生活を選択し、多くを持たず、物質主義・競争主義の現代社会から距離を置いて、自己の内なる幸福を見いだした人” みたいなイメージ湧きません?

彼のミニマルな生活を通して、お金や物、成功や名声とは異なる人生の価値とか、生きる意味、みたいのを見い出せる感じの流れになってるかと思ったんです。


ところが、実際映画を見ると・・・

ホームレス生活も彼が ”選んだ” っていうよりは、なんとなくそういう風になって、ズルズルしてたら5年経ってた、みたいな。

ファッション界に身を置き続けているのも、この仕事が好きで情熱を感じているってわけじゃなくて、他にやりたいことも、やれることもないからなんとなく、みたいな。

それから、彼は半分くらいは自分の今の生活を受け入れいているけど、なんでこんなことになちゃったかな〜って、残り半分は後悔もしてる。


なんていうか、
映画見ただけで、マークさんのこと何もわかっちゃいないんですが、
大変失礼なことは承知申し上げますが・・・

なんだろう

映画が進むにつれ漂う、

ダメンズ感。


こんな(ハンサムな)見た目だから、遊び人と思われて逆に恋愛がうまくいかないんだ〜
ガッツついてる思われたくないけど、実はめちゃくちゃ女の子と遊びたいんだ〜
どこで人生を間違えちゃったんだろう〜
僕だってこの歳になったら、もっとまっとうな人生を送っていると思ったのに〜
ママは僕のことを恥じてるんだ〜
家族以外の誰にも”愛してる”って言ったことないんだ〜
自分のことが嫌いなんだよ〜

などなど
飛び出す弱音。

女性だったら、「しっかりせんかい!」とどやしつけたくなるグズグズボーイっぷり。

そう、シュッとした見た目と裏腹に、なんかちょっと情けないの、彼。

多くを持たず、身軽に、自由に生きる人生をエンジョイ!
っていうのとはだいぶ違う感じなの。

独立記念日の花火を見ながら屋上でくつろいでいるとき、隣のビルの屋上にいた若者から話しかけられて、「結婚してないの?」って聞かれると、一瞬は、気楽な独身貴族さ〜みたいにおどけて見せるも、若者が「それって最高じゃん!俺もそういう風に生きるよ!一生結婚なんてしないぜー!」ってノリノリで返すと、思わず「いやいや、違うんだよ・・・」って押し黙っちゃうの。全然開き直れてないの。


しかし、最初こそがっかりしたものの、このイケメンだけど割と繊細で情けない中年男が、だんだん面白くなってくる。

むしろ、彼が特に達観もしてない、ふつうの人だからこそ、この作品は意味があるのかもしれない。

”ダメンズ” 呼ばわりしましたが、よく言えば、非常に人間味溢れる人。
あーだーこーだ悩んじゃうとこなんて、世の男性は激しく共感しちゃうんじゃないでしょうか?

自由を謳歌!って程でもないが、家が無いという状況下においては、十分楽しく過ごしてらっしゃいますし、エレガントな身なりを保ち続けるプライドも失っていない。

むしろ、彼のちょっと弱くて情けないくらいの緩さ・柔軟さが、過酷なホームレス生活で、体はもとより、精神も崩さずサバイバルできた秘訣なのかもしれない。
(自殺が頭をよぎったこともある、とも語ってましたが。)

実際、もっと悲壮な雰囲気になってもおかしくないのに、彼の気楽さ、陽気さ、ユーモアが、この映画をポジティブな印象にしている。


映画の宣伝文句のように、”彼の人生を通して生きるヒント” は見い出せなかったけれど、元モデルのイケてる見た目のおっさんが、ニューヨークのボロいビルの屋上で、ビニールシートに包まれながら眠ってたってことを、ただ ”知る” だけでいいのかも、って思えました。

ダメンズとか言ってすいません。


上映後に行われた舞台挨拶は、マークさんからの挨拶と、観客との質疑応答で約20分くらい。
私はごちゃごちゃと考えてるうちに終わってしましまったので、質問できなくて残念でした。

現在のマークさん。お隣は通訳をされてた方。

もう屋上には住んでおらず、現在はお友達の部屋を借りていらっしゃるそう。
そのせいなのか、映画の中のような、シャープさというか、ちょっとギラっとした野性味?みたいのはあまり感じられませんでした。

余談ですが、1月26日に行われた舞台挨拶でマークと対談した、映画コメンテーターLiLiCoさんがブログで書いていたのですが、映画の中で彼が市民会館みたいなとこでサンタの格好をして、子供たちの相手をしているシーン、あれボランティアなんですって。
特に何も語られないから、クリスマス時期の日雇いバイトみたいなもんかと思ってた。
そのときはちょっと、含蓄のありそうないいこと言ってたな。


(H)

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